石津 健太郎（国立研究開発法人情報通信研究機構 )

Beyond 5Gは、これまで進化を繰り返してきた第5世代移動通信システム（5G）の機能拡張や性能向上に加えて、 上空などへの3次元的なエリア展開や、現実世界（フィジカル空間）と仮想世界（サイバー空間）を融合するシステムとして 検討が進められており、これにより実現可能なサービスの範囲は格段に広がる。

Beyond 5Gが扱う技術の範囲は従来の情報通信技術をはるかに超え、異分野から持ち寄られた 機能やデータが適材適所に組み合わされてサービスを提供する。 そのためには適切なアーキテクチャをオープンに定義し、 Beyond 5Gに参加したいプレーヤが大小にかかわらず機能提供できる仕組みが必要である。

このようなBeyond 5Gの構想に基づき、NICTでは2030年以降の未来生活シナリオを議論し、 さらにアーキテクチャや必要な要素技術を整理して、ホワイトペーパーを公開した。

本講演では、そのホワイトペーパーについて背景を含めて説明し、情報通信システムの 在り方に関する議論の端緒としたい。

下西 英之（大阪大学サイバーメディアセンター / NEC新事業推進部門)

5GやBeyond 5Gの時代、デジタルトランスフォーメーションはさらに加速し、あらゆるものがデジタル化されて実世界との融合が深く進んでいく。 ここでは、2030年の世界に向けて、Beyond 5Gがどのような新しい社会を形作っていくのかというビジョンを、「人間・空間・時間」を超えていくという観点から、 そしてそのためのテレコミュニケーションの進化の観点から述べる。
そして、Beyond 5G時代の実世界と仮想世界の融合に向け、不確実な実世界を高度にデジタル化し仮想世界と融合する基盤となる確率的デジタルツインについて述べる。 確率的デジタルツインとは誤差情報を含む確率的な情報としてデジタルツインを表現するものであり、これによってAI認識の不確実性や位置計測の誤差を許容し、 人とロボットの安全かつ効率的な共存・協働を推進する。

伊賀野 康生 (株式会社 企)

「放送と通信の融合」が言われ始めてから長い時間が過ぎました。 NHK+やTVerなどの放送事業者による番組コンテンツのインターネット配信が行われ、放送波と同時の配信（リアルタイム）も始まっています。

総務省では昨年11月から「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」という会議体が発足し、「ブロードバンド代替」という枠組みが検討されています。 この枠組みでは「放送事業者の放送設備を部分的に廃止し、インターネットとブロードバンドサービスを使った『放送』の実現」が想定されています。 今回の動きのモチベーション／原動力や、具体的な内容、地域の通信事業者の役割などを、本検討を担った担当者として解説します。

デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会 小規模中継局等のブロードバンド等による代替に関する作業チーム（第6回）配付資料(総務省)

高瀬 英希 (東京大学 大学院情報理工学系研究科)

5G/local 5G時代の到来がもたらした技術革新は，「広域分散通信網の "民主化"」に集約される． 5Gで掲げられるユースシナリオのうちの本質は「超多数同時接続」であり，さらにBeyond 5Gにおける新基軸は「拡張性」「自律性」にあると考える． それでは，このよう超並列分散処理が行われる広域分散型のIoTシステムをどのように実現すればよいのか？ この問いに応える策のひとつとして，講演者らは2021年10月より標記の研究開発プロジェクト（情報通信研究機構Beyond 5Gシーズ創出型プログラムにおける委託研究 (04001)）を開始した．

本講演では, 我々が抱く5G/B5G技術への期待と課題感を共有し, 本プロジェクトで取り組む研究開発項目とそのアプローチを紹介する． 各項目の成果は少しずつ挙がってきており，これらを時間の許す限り皆さまに共有したい． 研究成果は実用的な IoTアプリケーションへの適用による実証評価を予定しており，想定されるユースケースや期待される効果について特に皆さまと議論したい．

下條 真司 (大阪大学 サイバーメディアセンター)

いよいよ万博開催まで1000日を切った．万博の開催される夢洲，うめきた２期をベースとしたスーパーシティも認定され，大阪府市のデータ連携基盤ORDENの構築もはじまり出している． 大阪のスマートシティのハブとなることが期待されている大阪公立大学森ノ宮キャンパスの設計も動き出している．いよいよ万博を盛り上げる時である．

実は，CKPの原点が，1995年にAPECが開催された時地元協力協議会という団体を作って関西の観光や文化をインターネットを通じて来場された 各国閣僚や記者たちに紹介するという活動にあったことを思い出した．調子に乗って，周辺ホテルやプレスセンターにまでインターネットと端末を持ち込み， 出来立てホヤホヤのNews on Demandや音楽配信を行った．当時の活動を振り返ってみるとインターネットに映像や音楽が流せるということが初々しく， それが大きな起爆剤となった．その後の色々な活動に繋がり，実は，radikoもそのような活動の一環としてその時のメンバーを中心に生み出されている．

さて，僕らは今から何ができるだろう．

阿多 信吾 (大阪公立大学 学長補佐(情報・データ戦略)／ 大学院情報学研究科)

今、大阪ではスーパーシティ、万博など、さまざまな大規模プロジェクトが動こうとしています。 そこではスマート社会の実現、未来社会デザイン、データ活用を通じた社会課題解決などがあらゆる場面で語られていますが、 これらを社会に根付かせるためには、実際に居住し活動している我々が活動していくことが重要であると考えます。

この講演では、大阪で進められているこれらのプロジェクトについてご紹介し、関西圏が一丸となって 機運を醸成していくために我々に何ができるかを皆さんとともに議論できる話題を提供できればと考えています。

吉田 正之 (NTTコミュニケーションズ / 沖縄オープンラボラトリ)

沖縄オープンラボラトリは、オープンテクノロジーを軸にオープンな交流、連携、共創を推進しながら先進技術を産業や社会へ実適用するための研究・活動を進めています。 本講演では沖縄オープンラボラトリにて取り組んでいる５Gやeスポーツをテーマにした取り組みを中心にご紹介させていただきます。

木村 安宏・木村 舟 (NTTコミュニケーションズ)

我々NTTコミュニケーションズでは、数十拠点数百台規模の全社共同検証網（Testbed）を運用しています。 その規模とユーザ数は年々増加しており、自動化によるOPEX削減や品質向上が求められております。

今回は、このような状況のTestbedで実施している自動化の取り組みを紹介します。 またその一例として、NWコントローラ導入後も、手動での装置の設定変更が頻繁に実施される検証環境ならではの 「進化的ブラウンフィールド」へのNWコントローラ導入の苦労とその対処をご紹介します。

北野 貴稔 (NEC デジタルテクノロジー開発研究所)

NECは、AIの世界的な開発競争が激化する中で優位性を維持・強化するため、AI研究用スーパーコンピュータの構築を開始し、 2023年3月に国内企業で最大規模の580PFLOPS超となるシステムの稼働を予定しています。 既に一部のシステム(100PFLOPS)についてNECの数百名の AI研究者が利用を開始しており、今後構築する480PFLPOSのシステムを 加え国内最高峰のAIに特化した研究開発環境による、より高度な先進AIの迅速な開発に役立てます。

本講演では、国内企業で最大規模となるNECのAIスーパーコンピュータの概要とシステムアーキテクチャについて説明します。

新井 イスマイル (奈良先端科学技術大学院大学)

奈良先端大では防災・学術実験目的で地域BWA（2.5GHz帯LTE）とローカル5G（Sub6・SA）の設備を学内に設置して運用している。 ネットワーク思想・設計がEthernetとは異なり、導入にあたりキャンパスネットワーク運用者にとって様々な困難を伴った。 運用中の今なお奮闘中である。学内ネットワーク構成について紹介するとともに、運用経験のあるWi-Fiとの比較、キャリアLTE, 5Gとの比較をして 大学でLTE/5G基地局を設置する意義について議論する。