文化遺産

1972年のユネスコ総会で採択された「世界遺産条約」は、人類が次の世代に受 け継ぐべき自然・文化遺産の保護を掲げている。日本は1992年にこの条約を締 結し、これまで自然遺産2件、文化遺産3件が登録されているが、文化遺産3件 はすべて関西に存在しており、その分布地域も1府3県にわたっている。
1993年に登録されたのが、「姫路城」(兵庫県姫路市)と「法隆寺地域の仏教 建造物」(奈良県)。1610年に完成した姫路城は、白漆喰塗の城壁の美しさか ら、白鷺城ともいわれ、その姿が多くの文学作品に描かれてきた。それより約 250年前に建てられた山城を原形としており、日本の城郭建築の頂点ともいえ る。大きな天守閣を中心にして、3つの小さな天守があり、その高低差や微妙 に違う屋根の形態などが、調和美を醸し出している。
法隆寺地域の仏教建造物は聖徳太子と推古天皇の発願によって、父、用明天皇 の病気治癒を願って、607年に建立されたと伝えられている。金堂、五重塔、 中門や回廊が、7世紀の木造の建築様式をいまに伝える世界有数の貴重な建物 である。
1994年には、「古都京都の文化財(京都市・宇治市・大津市)」が登録された。 京都府と滋賀県にまたがる17の社寺と城である。国宝38件、特別名勝8件を含 んでおり、面積は1,056ヘクタールにも及ぶ。点在する文化遺産がこのように一括登 録されたのは世界で初めてであり、京都を中心にした伝統文化の集積の大きさ を物語っている。
登録された社寺は、上賀茂神社、下鴨神社、金閣寺、銀閣寺、東寺、清水寺、 醍醐寺、仁和寺、高山寺、竜安寺、天竜寺、西芳寺、西本願寺、二条城(以上 京都市)、平等院、宇治上神社(京都府宇治市)、延暦寺(滋賀県大津市)で、 「日本書紀」の伝承に登場する上賀茂神社から17世紀の二条城まで、建設の時 代も多岐にわたっている。
このほか、聖徳太子創建の四天王寺、神功皇后らを祀る住吉大社(以上大阪 市)、聖武天皇が建立した東大寺、鑑真の唐招提寺(以上奈良市)、空海が開 祖の高野山(和歌山県)、神社本庁の中心・伊勢神宮(三重県)、禅の修行道 場・永平寺(福井県)、近世の名城・彦根城(滋賀県)なども、日本が誇る文 化遺産である。