現代文化

関西は現代文化の発信基地でもある。絵画では京都を中心に、大和絵の伝統 を持つ日本画の分野で人材を輩出、京都画壇を形成している。上村松篁は花 鳥風月を題材に日本画の美を極め、京都に生まれ学んだ加山又造は、活動の 拠点を関東に移したものの、美人画に新たな境地を開いた。
伝統を守りながら、たえず新しいものを創造していく関西文化の特徴の中で生 まれたのが、実験的な絵画の表現を目指した具体美術運動である。1954年、兵 庫県芦屋市在住の吉原治良が具体美術協会をつくり、次々とユニークな作品を 制作、海外にも紹介され、新しい日本の美術運動として注目された。具体美術 協会は1972年の吉原の死後、解散したが、それぞれのメンバーはその遺志を受 け継ぎ、個別に創作活動を行っている。また、阪神・淡路大震災で亡くなった 津高和一は戦後日本の抽象画壇を代表する画家であった。
戦後、漫画やアニメーションが文化として認知されたことについて、兵庫県宝 塚市出身の手塚治虫が果した役割の大きさは計り知れない。伝統的な紙芝居や 外国の漫画の模倣ではなく、大人にも受け入れられる高水準の作品群は、今も 多くの漫画家志望者の偶像として高い評価を受け続けている。
文化振興の面では、大阪府文化振興財団は1990年から、絵画、版画、彫刻の3 部門で、世界規模の公募展である「大阪トリエンナーレ・国際現代造形コンク ール」を開催している。
建築の分野では、大阪生まれの安藤忠雄が、コンクリートなどの素材の巧みな 構築で海外でも活躍している。デザイナーのコシノヒロコ、ジュンコ、ミチコ の3姉妹は世界ファッション界で名を成した。また風や水など自然の力を利用 した彫刻の新宮晉は、国際的な評価に加えて、関西国際空港のモニュメントを 制作して、広くその存在をアピールした。
作家では、大阪出身の川端康成が、日本で最初のノーベル文学賞を受賞した。 その他、司馬遼太郎、陳舜臣、小松左京らは日本という枠を超え、その作品は いずれも数多くの言語に翻訳され、グローバルな読者層を獲得している。劇作 家では、山崎正和が清盛、秀吉、世阿弥などの人物の内面を描いた現代劇で、 一躍わが国の第一人者となった。
また、世界の指揮界の巨匠、朝比奈隆ひきいる大阪フィルハーモニー交響楽団、 大阪センチュリー交響楽団、地方自治体が創立した京都市交響楽団などのオー ケストラが活発な演奏活動を行っている。これらの活動を支える文化施設とし て、国際的な音楽活動を今も支え続ける大阪の「フェスティバル・ホール」、 わが国最初のクラシック専用コンサートホールの「ザ・シンフォニーホール」 をはじめ、「いづみホール」、大阪音大の「オペラハウス」、「京都コンサー ト・ホール」などがある。兵庫県尼崎市の「アルカイックホール」は関西のオ ペラ活動の拠点となっている。
さらに、関西では演劇も盛んで、劇団四季は、東京だけでなく大阪のMBS劇場 に活動の拠点を置き、本格的なミュージカルを上演している。また、わが国で もトップ水準を誇る劇場として、「飛天」、「シアタードラマシティ」、「新 神戸オリエンタル劇場」、「近鉄劇場」等がある。その他、若い意欲的な演劇 人に実験的な場を提供している兵庫県尼崎市の「ピッコロシアター」や大阪府 の「大阪府立青少年会館」など、現代演劇から古典芸能まで楽しむことができ る。