
地球的な規模の温暖化現象、異常気象、オゾン層の破壊、酸性雨、森林破壊、
砂漠化、海洋汚染などが進んでいる。また一方では、世界的な人口の増大は、
深刻な飢餓問題を引き起こしている。こうした地球環境の危機に、人類ができ
ることは何か。何を21世紀に受け継いでいかなければならないのか。こうした
多くの問題を抱える環境対策でも、関西は先進的、且つ重要な役割を担ってい
る。
関西は早くから工業地帯として発展し、かつては「公害の町」といわれた経験
を持っている。戦後の高度経済成長期、工場や自動車による大気汚染が進行し、
生活排水などのため大阪湾や河川の汚染もひどくなっていた。しかし官民一体
となった懸命な努力の成果が実を結び、これらの問題を克服しつつある。この
過程を通じて、関西には公害対策のノウハウが蓄積されている。
各地方自治体は環境対策に、さまざまな工夫を凝らしている。大阪府は府民の
基本的な権利として「環境権」を条例前文で宣言し、都市環境、歴史的文化的
環境まで対象を拡大した、独自の「環境基本条例」と「生活環境保全等に関す
る条例」を制定した。それを基に、開発前の環境影響評価の実施、低公害車の
導入、広域下水道の整備、環境教育の推進などを行っている。
市域の約1割が河川である大阪市は、その特色を生かして「新・水の都大阪グ
ランドデザイン」を策定し、河川の環境保全と水辺の景観整備などを柱にした
都市の個性づくりに参画している。
滋賀県では住民たちも積極的に環境保全の運動に参加し、約1,000人の市民に
よるホタルの生息調査を実施して、地域の環境がどのように変化しているかを
体感している。
19世紀末に琵琶湖疏水を完成させた京都市は水道、下水道の環境整備を重点施
策の一つとして、オゾン処理や生物処理などによる高度上水処理の本格的な研
究を発足させた。
兵庫県西宮市には、1992年にスタートし、2001年までの10年間、町の環境の変
化を記録する「地球ウォッチングクラブ」という活動が芽生えている。地域の
生き物の生息状態の調査から始め、「地球にやさしい環境」をつくるため、市
民としての行動規範を模索中である。
このほか、生活協同組合を中心にしたゴミのリサイクル運動なども活発で、関
西は官民あげて環境問題に取り組んでいる。