
関西には、10数世紀に及ぶ歴史と伝統に育まれた地場産業が今日でも脈々と生
き続けており、長い年月の間に蓄積された伝統技術を、現代のテクノロジーと
融合させて、世界市場で揺るぎなき地位を築き上げている中小・中堅企業も多
い。
京都は、着物の素材となる伝統的な絹織物、西陣織の産地として知られている。
江戸時代以来の手法と、明治時代にフランス・リヨンから導入した織機の技術
をミックスして、現在でも京都の代表的産業として栄えている。
近世初頭に鉄砲を生産し、その後も刃物の産地として栄えてきた大阪府堺市か
らは、有力な自転車部品メーカーが複数現れ、近年の輸入自転車の急増にもか
かわらず国内生産40%のシェアを誇っている。シマノは世界でもトップクラス
のシェアを誇り、特に変速機では世界の8割を生産する。大阪府下では、泉佐
野市のタオル、泉大津市の毛布、和泉市の人造真珠、東大阪市の作業工具、ネ
ジ、金網、魔法瓶など多様な産地がある。
福井県鯖江市は、眼鏡枠の産地として国内の90%を生産しており、また京都府
北部の丹後町を中心とした地域では、絹織物の丹後ちりめんを生産している。
和歌山県北部の海南市は、全国一の家庭用品の産地。明治時代のシュロ栽培を
契機として、ほうき、マットなどを作り始めたが、現在はナイロンなどの化学
繊維、プラスチックを原料に、5万種を越える商品を生産している。
兵庫県北部の豊岡市はかばん産地で、塩化ビニール、合成皮革などの高品質で
洗練された製品を生産し、全国シェアは数量で8割に及んでいる。
このほか、滋賀県には織物、縫製品、陶器の産地が、また、奈良県にはグロー
ブ・ミット、靴などの革製品や、くつ下などニット製品の産地がある。