
「京都の着だおれ、大阪の食いだおれ」といわれるように、京都では古くから
織物業が盛んだった。この中でも、西陣織は現在も日本の織物の代名詞とされ
ている。
しかし、織物だけではなく「黒紋付染」「友禅染」など独自の染色技術も発展
し、室町を中心に繊維問屋の町を形成した。明治の文明開化以降、西洋の洋装
スタイルが導入され、現在では、日本人の衣服は洋風が一般的になっている。
しかし、日本の民族衣装ともいえる着物の需要は依然として健在であり、成人
式や結婚式等の行事には老若男女を問わず、多くの人々に着用されている。
工芸の分野では、焼き物の産地が関西には多い。京都の清水焼などの京焼、滋
賀の信楽焼、兵庫の丹波焼、立杭焼、三重の伊賀焼などは全国的にその名を知
られている。信楽焼は日本の6古窯の1つであり、約1200年の伝統を持っている。
当初は都の瓦づくりから出発し、しだいに水瓶、油入れなど日用雑器をつくる
ようになり、茶道具の生産なども行われた。ユーモラスなタヌキの焼き物が信
楽焼を有名にしたが、近年タイルなど建築材料の生産に力を注ぎ、大きな飛躍
を目指している。
このほか、関西では、刃物、錫板、指物、象眼、塗り物、扇子、墨、箸、和紙
などの伝統工芸も盛んで、歴史に培われた技術がいまでも伝承されている。と
くに大阪欄間は、杉のすかし彫りが特徴で近年その精緻な技量と、木の温かみ
が受けて、美術品として、またインテリア用品として人気を博している。奈良・
吉野の割り箸は吉野杉・檜を使った素材の良さで知られ、京都の扇子は単なる
実用品のみならず、そこに描かれた絵画は美術工芸品としての価値さえもある。
さらに、1,400年余りの伝統を持つ福井の越前塗は完成までに10数工程が必要
なだけに、伝統技術を継承する後継者の育成が求められている。そして、地元
では若い後継者の育成のためにも、伝統技術を生かしつつ、現代の感覚にあっ
た製品づくりを推進している。和歌山の黒江塗もその歴史が古く、独特の光沢
と色彩で名高い。
また神戸は全国の真珠の加工・流通の80%を取り扱う世界最大の真珠の集散地
である。1920年代、神戸は真珠輸出の中心となっていた。その真珠の集散を通
じて、神戸には精緻な真珠の加工技術が開発され、真珠加工業が発展した。神
戸には日本真珠輸出組合の組合員162社の約70%、113社の本社があり(1991
年)、神戸からの真珠輸出は全国の数量の約90%、金額ベースでは50〜60%を
占めている。
奈良県の大和郡山市は金魚の養殖で有名である。1724年大和郡山へ初めて金魚
が導入され幕末には金魚の養殖が藩士の内職となった。明治になると一般農家
にも金魚の養殖が奨励され、気候が養殖に適し、餌のミジンコが容易に入手で
きたことなどで生産が増え、現在金魚池面積は約80万m2、金魚出荷量は年間8
千万尾を数えている。