■協調、そして共生

第2次大戦後、アジアは日本に対して原料の供給地として、また日本製品の市 場という、いわば単なる受け身の役割を果たしてきたとも言えるが、最近では その色合いはすっかり変化したものになっている。タイや、シンガポールで製 造された日本メーカーの家電製品や軽工業製品が、日本に逆輸入され日本人の 生活の中に入り込んでいる。アジアは、今や日本企業のこれまでの「モノ」の 輸出一辺倒の市場から、技術移転や、現地人幹部登用など、現地の人々との共 存共栄を図る日本企業のグローバルな企業活動の戦略拠点となっている。 そ のために、日本企業の経営姿勢や、ひいては、日本の社会・文化・風土などに 対し、より一層の理解を促進するため、現地スタッフに対して日本語教室など を開いている企業も多い。また現地の文化団体を後援したり、社員スポーツ大 会を開いたりするコミュニティ活動も盛んに行われている。一方、進出地にお ける習慣や文化の違いを習得し、現地社会に溶け込もうと、日本人社員に対し、 現地の経済・文化の研修会を行う日本企業も増加している。

企業が独自に現地スタッフを日本に招き、研修を行うケースも増えている。大 阪府の家電用プラスチック成型加工メーカーは、タイの工場から将来の幹部候 補生を毎年10人前後、本社工場に招き、日本人の生活様式から製品の品質管理 に至るまで日本式経営方式のすべてを教えている。

アジア諸国に対する、関西の企業進出状況は、大手企業では、家電メーカー数 社がタイ、マレーシア、シンガポールなど約40か所でテレビ、ビデオ、エアコ ンなどの製造、販売から部品生産までを手がけており、日本での国内生産量を 凌駕している商品も多く、日本への逆輸入も加速度をまして増加し続けている。 薬品メーカーなども台湾、タイ、香港、フィリピン、インドネシア等に医薬品 を製造、販売する合弁会社を設立している。食品メーカー数社は、香港、シン ガポールなどを拠点に、即席めん、冷凍食品など生産、現地人の嗜好に合わせ た製品造りのため、きめ細かいマーケティングを行っている。

ある関西の小規模な電機部品メーカーは、1987年にマレーシアに進出し、現地 の人達と共に辛酸を重ね、経営努力につとめた結果、いまでは日本メーカーは もとより、世界の大手電機メーカーにフロッピーディスクなどを納入する優良 企業にまで成長した。

また大阪のインテリアメーカーは、韓国、台湾の会社と技術提携して合弁会社 を設立し、シートや内装材を現地自動車メーカーに納入している。タオル卸売 業者は、シンガポールの国際卸売マート内に日本から本社を移転し、アジアを 統括する現地法人を設立し、ベトナムで委託生産を開始した。パキスタン、イ ンド、中国から原材料を調達し、いまではアジアを軸に多国籍企業として活躍 を続けている。これまでアジアに未進出の関西の中小企業の多くも、アジア志 向は強まる一方で、経済団体が1994年にまとめた海外進出動向調査によると、 既に中小企業の4割近い企業が何らかの形で海外進出に関与しており、その関 係する進出先の約9割はアジアだった。

このように、関西とアジアとの交易は拡大し、最近の大阪税関の地域別通関実 績では、アジアが輸出入とも北米を抜いて一位となった。関西人の気取らない 人柄や、効率的な経営手法はアジア各地に受け入れられ、空港や商取引の場で も関西弁がしばしば語られるようになっている。