●創造への発進地

関西は、緑あふれる豊かな自然に恵まれ、文化財の宝庫となっている。

そこには、幾多の困難をも克服してきた、先人たちの創造性が息づいている。

その代表格は、国連のUNESCO(教育・科学・文化機関)が指定した3件の世界 文化遺産である。

現存する世界最古の木造建築物、法隆寺(奈良)、その美しさから白鷺城の異 名があり、堅固な守りを誇る姫路城(兵庫)、優雅な金閣寺や清水寺、延暦寺 などの古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)である。

このほか、大坂城の遺構や、その近くに広がる7、8世紀の難波宮跡、日本の宮 廷文化が展開された京都の御所、歴史の散歩道になっている奈良の明日香の里、 井伊家35万石の威容を今に伝える滋賀の彦根城、うっそうとした緑に覆われた 和歌山の霊峯・高野山、凛々とした静寂のなかに佇む清楚な伊勢神宮など史跡 や名所はいたる所に見られる。

一方、江戸時代に「天下の台所」といわれた大阪では、商品流通の主役をつと めた町人が社会的地位を向上させ、彼らを中心に独自の上方文化をも生み出し た。俳諧、浮世草子、浄瑠璃等の世界で、井原西鶴、上田秋成、与謝蕪村など が大阪から輩出した。近松門左衛門も大阪で活躍し、我が国近代文学史上に金 字塔を築きあげた。また大商人たちが両替店を開いて、為替、手形、貸付など を行っていたが、これがいまの金融・証券業の原型となっている。関西は、い わば日本の金融の発祥地でもある。

また日本中の物資の集散地として、米の現物取引以外にも将来を見込んで米の 取引をする先物取引の原形が、わが国で最初に始まった。

このような歴史を背景に、豊かな自然の四季折々の微妙な変化は、その時代、 時代に住民の「心の糧」としてそれぞれの地域に深く根を下ろし、常に新しい 文化や産業を産み出す原動力となってきた。古くは茶の湯、能楽、上方歌舞伎、 人形浄瑠璃など数々の伝統文化を、また、京都の西陣織、京焼、京指物、堺の 刃物、京都・伏見や兵庫・灘の酒、福井の越前塗りなどの地場産業を発展させ てきた。

今日、スーパーマーケットから半導体、セラミック、精密機器、インスタント 食品、プレハブ住宅まで、時代を先取りする産業は関西で育ち、発展した。

このような進取の気性は、ノーベル賞受賞者の数でも窺い知ることができる。 これまで日本で8人が受賞しているが、湯川秀樹(物理学、故人)、朝永振一 郎(同)、川端康成(文学、故人)、江崎玲於奈(物理学)、福井謙一(化 学)、利根川進(生理学・医学)の6氏は関西の出身か関西の大学で学んだ人 々である。

関西は自由で開放的な風土に、柔軟な思考と歴史的な文化を蓄積している。民 間の主導による、関西文化学術研究都市を始めとする特色ある研究開発拠点の 形成や、芸能、ファッションなど生活関連文化における関西人の創造性とアイ デアに見られるように、関西は、文化が新たな産業を創出し、産業が文化を生 み出す循環型ダイナミズムをもった地域でもある。

東京への一極集中の弊害が指摘され、地方分権が重要な課題となっている。均 衡ある国土の発展に進む時、東京とは異なった特色ある文化首都を目指す、関 西のバイタリティと柔軟性に対し、内外からの期待は飛躍的に高まっている。